株の売買タイミング、失敗しないためのキホン

 株式投資で成功するために最も大切で、最も難しいことは売買のタイミング。つまりいつ買い、いつ売ればいいかの判断だということを前回11月14日付「株投資は難しくて当然 金融機関頼みは失敗のもと」で説明しました。今回は、どうすればこの難問をクリアすることができるかについて考えてみます。

 売買のタイミングは、長期投資と短期投資でかなり大きく異なります。長期投資というのは1年以上(通常は2~5年程度)、短期投資は数週間から3カ月程度での売買を指します。その中間として、6カ月程度で売買する中期投資もあります。また「デイトレード」という取引が近年脚光を浴びていますが、これは午前中に買った銘柄を午後に売却したり、数日のうちに売買を繰り返したりする超短期投資のことです。

 長期投資家は相場が安値圏(景気が低迷期)のときに買い、高値圏まで上昇してきた(景気が好調・過熱気味の)ときに売るのが一般的です。これに対し短期投資家は相場が上昇トレンドに入ったことを確認したうえで、安値からかなり値上がりした銘柄を買い、それよりさらに上昇した時点で売るという投資法を繰り返します。「押し目買いの吹き値売り」というのが短期投資のコツとされています。デイトレーダーはわずかな利ザヤ(1~5円程度)を狙い、超短期で頻繁に投資します。株価の細かいクセを熟知していないとできない投資法です。

 これらの投資法にはそれぞれ一長一短があります。長期投資の場合、絶好の買い場・売り場はたびたびあるものではなく、せいぜい3~5年に1度というペースになります。それだけに余裕資金を使って、絶好の買い場・売り場がやってくるまで辛抱強く待つ忍耐力が必要です。

 短期投資やデイトレードは高値で買い、それよりも高値で売るという投資法になります。このため、ほとんど1年中株式投資を楽しむことができますが、1回の売買で得る利益が小さいため頻繁に売買するようになり、本業がおろそかになりがちです。

 また株価の上昇は時間をかけて少しずつのペースなのに対し、急落の局面は突然やってくるため、それまでにコツコツと積み上げてきた利益を数日や数週間で吹き飛ばしてしまうリスクもあります。初心者や経験の浅い投資家は長期投資、あるいは中期投資を基本とすることをお勧めします。

 長期投資家が売買のタイミングを間違えないためには、日経平均株価 や東証株価指数 (TOPIX)など相場全体が将来どうなるかをある程度正確に予想することが必要です。これはそれほど難しいことではありません。株式相場は景気の先行指標 といわれ、景気を先取りする形で動く傾向があります。景気は「不況→底入れ →回復→好況→過熱→失速→後退→不況」という循環を繰り返しています。景気が現在どの段階にあるかは、新聞やテレビニュースなどを見ていればほとんど誰にでも分かることです。

 足元は不況でも、近いうちに底入れ・回復が近いという兆しが国内総生産 (GDP)などの経済指標に出てくるようになれば、株式市場でも期待感で買う投資家が出てきます。このため実際に景気が底入れ・回復する前から株式相場は上昇に転じるのです。

 景気と株式相場のタイムラグ (時間のズレ)は3~9カ月(平均6カ月)程度といわれています。このため実際に景気が回復し、好況になってから株式投資を始めたのでは高値をつかむ恐れが出てくるのです。

 ただし、こうした投資法が通用しない場合もあります。不況でカネ余り現象のときに起きる金融相場 です。金融相場では、企業が不況で設備投資を手控えているのに、中央銀行 が景気を刺激するための金融緩和政策で大量の資金を民間に供給します。すると、だぶついて行き場のない資金が株式市場に流れ込み、株高を引き起こすのです。

 金融相場は、景気が回復して金利が上昇に向かうと終焉(しゅうえん)を迎えます。米連邦準備理事会(FRB )が量的緩和を縮小すれば、いまの世界的な金融相場の「終わりの始まり」になります。投資家がFRBの動向を注視しているのは、そのためです。

 株式相場や景気を山に例えれば、長期投資家の理想は1~3合目で買って、8合目以上では持ち株をすべて利食い売りし株式市場から離れる、という投資法です。もっと具体的にいえば不況のどん底(超安値圏の株価)あるいは、底入れの兆しが出始めたころ(株価は上昇を開始)に買って、景気が回復し空前の好景気(株価は過去最高値圏)で持ち株をすべて売却。その資金を高金利・高利回り の10年物国債 や定期預金(10年定期)などに預けて急落に備えるのが最も効率的で、確実に資産を増やすことができる方法です。

 しかし、この投資法が成功するには5~10年、あるいはそれ以上の期間を必要とするため、相当な忍耐力が必要です。また時間的にも金銭的にもある程度の余裕がないと、難しい投資法といえるかもしれません。

 相場には常に行きすぎが付き物なので、景気の実体と比較して株価が上がりすぎたり下がりすぎたりします。このため買う場合も売る場合も、一度にまとめて売買するのではなく、何回かに分けて(時期をずらして)売買するのが失敗しない有力なコツとなるのです。

 短期投資家にとって重要な注目ポイントは米国株の動向や円・ドル相場、金利です。前日の米国株が高くなれば、今日の日本株も高くなるという確率は6割強に上ります。また日本の代表的な企業には輸出関連が多いため、株式市場では円安・ドル高を歓迎し、円高・ドル安を嫌う傾向があります。日本株の目先の動きは、この2つの影響を強く受けています。それだけに短期投資家は米国株や為替に大きな影響を与える米国経済とFRBの金融政策に強い関心を持たざるを得ないのです。
経済ジャーナリスト・西野武彦 2013/11/21 7:00 日本経済新聞

上記に書かれていることは株式投資の王道ですが、実践するとなるとなかなかできないものです。これができればとっくに金持ちになっているはずです(笑)。でも常に意識していれば的確な売買タイミングで売買できるようになってくるものです。私も以前は塩漬けにすることが多かったのですが、今はきちんと利益を出せるようになりました。

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