海外勢の日本株買い越し、いつまでも続くと思うのは危険

大前研一の「産業突然死」時代の人生論』より

日本企業の戦略的ポジションが強化されたわけはない
 昨年の株価の上昇率は1972年以来、41年ぶりの高水準だった。2013年末の日経平均株価は1万6291円と、前年末に比べて6割近く上昇した。安倍晋三首相は12月30日、首相として初めて東京証券取引所の大納会に出席し、「来年もアベノミクスは買いだ」と挨拶していた。

 2013年が株式市場にとって最良の1年であったことは間違いない。安倍首相が打ち上げたアベノミクスへの期待もあったし、黒田東彦日銀総裁の金融緩和の影響もあっただろう。円安の効果も少なくなかった。

 ところが、年が明けてみると、日経平均株価は大幅に下落し、様相は一変した。今年も株高は持続できるのかという疑問が急速に広まっている。

 株価というものは企業が将来上げるであろう利益の「現在価値」であるから実態を超えて永遠に上がり続けることはあり得ない。「日本はアベという元気の良い首相がいるから大丈夫だよ」ということで、外国人投資家を中心にしばらく波に乗っかってみたのが昨年の「日本買い」だった。

 円安で恩恵を受ける企業の収益は確かに回復したが、決して日本企業の戦略的ポジションが強化された、という実態を伴っていたわけではない。

いずれ円安の副作用が浮上することも
 円安効果も副作用への懸念が高まってきている。

 円安で企業業績は向上したが、実は輸出は増えていない。むしろ、数量で見た輸出は減っている。為替差益で利益が増えているだけであり、日本製品の競争力が強まって輸出量が増えたわけではないのだ。

 円安が輸出増につながっていないのであれば、燃料コスト増などの副作用の方が問題となってくる。

 年初に株価が下落したのも、アベノミクス相場を維持するのはどうも難しそうだという感覚が全世界的に広がっていることが影響していると思う。

来るのも早いが、出て行くのも早い外国人投資家
 しかし、今のような円安がいつまでも続くものではない。ユーロ圏の一部の企業では、ユーロ高に悲鳴を上げるところも出ている。“口先緩和”のドラギマジックが切れれば、欧州中央銀行(ECB)もかなり大胆な量的緩和に追い込まれるだろうし、そろそろ世界的な「円安容認」にも転機が訪れるだろう。

 現在、日本の株高を支えているのは外国人投資家だから、潮目が変われば、彼らの行動も一変することになる。

 東証が12月27日に発表したデータによると、2013年12月の第3週は外国人の日本株買い越し額が8803億円と8週連続の買い越しとなった。2013年の外国人による日本株の買い越し額は14兆円余りと、過去最高を大幅に更新している。

 外国人投資家というのは、来るのも早いが出て行くのも早い。今のところは日本のノンキなお祝い気分に乗っかって日本株を買ってくれているが、そうした面々が株価を支えているというのは怖いものがある。

日本経済のムードが変わるときは要注意
 もちろん、外国人投資家のなかには、日本株に対して長期的な投資をしているところもなくはない。全体的に日本へのアロケーションも増えているが、すでにヘッジファンドなど多くの外国人投資家は日本株を売り抜ける機会をうかがっているので安心はできない。

 日本が株高を続けている理由は、外国人投資家による買い越しが続いていることを見越して投資信託や年金ファンドなどの株式折り込み比率が上がってきているからだ。

 今後、急に日本経済のムードが変わった場合には、外国勢が真っ先に日本株を売り払う。個人投資家と日本のファンドが取り残される、というのは「いつか来た道」である。

日本の論点
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