株初心者から不満爆発 これじゃあ大損だ!NISAのバカヤロー

「週刊現代」2014年3月1日号に「株初心者から不満爆発 これじゃあ大損だ!NISAのバカヤロー」という面白いタイトルの記事が載っていました。

昨年末までは空前のアベノミクスフィーバーで、まさか今年前半でこれほど大きく株価が下がるとは予想していなかった人が多数ですからこんな記事がでても仕方ないですね。

「税金タダ」って言ったのに!

「税金がタダになると聞いて口座を作って株式投資を始めたのですが、買った株がさっそく値下がりしてしまいました。どうすればいいのか証券会社の担当者に相談すると、このまま持ち続けたら、損したうえ、しかも課税される可能性があるというのです。『非課税』だというのに、『課税される』とは矛盾している。はじめに知っていればやっていませんでした。NISAのバカヤローですよ」

そう語るのは元商社マンの大桑雄介氏(仮名、64歳)である。今年1月からスタートした「少額投資非課税制度=NISA」を始めたら、思わぬ落とし穴にはまり頭を抱えている。

NISAは、株や投資信託などを売買する際に、その売却益、配当金、分配金にかかる約20%の税金が原則5年間免除される制度である。「税金がタダになる」ということで証券会社や銀行の窓口には新規口座開設を希望する顧客が殺到、NISA口座はこの1月に500万口座を突破する勢い。2月13日には「NISAの日」ということで、証券各社がセミナーやイベントを開くなど大騒ぎだ。

一方で、制度の不備が多く、口座開設者たちからはさっそく不満の声が出ている。ライフカウンセラーの紀平正幸氏も言う。

「NISAは投資で儲かった時には非課税というメリットがありますが、儲からなければメリットがないどころか、デメリットがたくさんあります。NISAを利用したために損をするというケースが続出する恐れもあります」

前出・大桑氏のケースがその好例だが、それにしても、非課税を謳う制度を利用したことで逆に損が膨らんでしまうのはなぜか。

NISAは原則5年間だけ非課税と期間が決められており、買った株などは期間中いつでも売れる。ただし、期限が来たら株を売却するか、NISA口座から課税される一般口座に移さなければいけない。

仮に当初100万円で株を購入し、期限が来た時に値下がりして50万円になっていたとすると、損切りをしたくなければ一般口座に移すことになる。

「ここに罠があります。NISA口座から一般口座に移した時点で、100万円ではなく、50万円でその株を購入したとみなされてしまうからです。その結果、口座を移した後に株価が100万円に回復してから売ろうとしても、利益が50万円出たとして20%=10万円の税金がかかってしまいます。仮に60万円で売った場合は、すでに40万円損をしているにもかかわらず、50万円から10万円のプラスになっているため、さらに2万円の税金を支払わなければいけません」(経済ジャーナリストの荻原博子氏)

初めからNISA口座ではなく一般口座で買っていれば、100万円で買った株を100万円で売っても60万円で売っても、税金はかからない。NISAに手を出したがため、本来払う必要のなかった税金を余計に支払うことになるのだ。

「通常の株取引には損益通算という仕組みがあり、年間の株取引で儲けた分を損した分と相殺して、払い過ぎた税金を取り戻せます。損益通算した上で、まだマイナス分が残っている場合は、それを3年間繰り越すこともできます。しかし、NISA口座では損益通算も3年間の繰り越しもできません。そのため、一般口座で取引をしていたら税金がかからなかったのに、NISA口座のため税金が発生するということが起こりえます」(前出・紀平氏)

いかにも儲かりそうな宣伝文句でアピールしておきながら、いざフタを開けて見れば欠陥だらけなのである。しかも、NISAがスタートした1月から日本株は急落劇に見舞われているため、「大損予備軍」が大量発生している形である。

■手数料ばかり取られた

NISAで損を膨らませないためには、次の点にも注意したほうがいい。

「金融機関はNISA口座を作った人に、販売手数料を多く稼げる投資信託を売ろうとします。NISA口座で投資信託を買えば、2000~3000円のキャッシュバックをするというキャンペーンを行っているところもありますが、この手に乗ってはいけません。

キャッシュバックが2000~3000円でも、販売手数料が3%の投資信託を100万円買わされれば、その時点で2万5000円以上をすでに損したことになります。金融機関にとっては海老で鯛を釣るようなおいしい商売なのです」(経済評論家の山崎元氏)

NISA口座ですでに投資信託を購入した人の中には、『毎月分配型』の投資信託を選んでいる人が多い。分配金が非課税となるため得すると考えがちだが、これも危険な投資といえる。

「分配金が非課税だという甘言には乗らないほうがいいでしょう。投資信託の分配金には運用益を分配する『普通分配金』と、元本から取り崩して分配する『特別分配金』がありますが、後者の特別分配金はもともと非課税なので、NISAのメリットがないのです。

普通分配金を出す投資信託にしても、本来であれば運用益を再投資したほうが資産が増えやすい。NISAで5年間運用することを考えれば、分配金のない投資信託のほうがメリットは大きくなるのです」(元野村證券勤務で、現在は資産運用コンサルを手掛けるオフィス・リベルタス代表の大江英樹氏)

NISA用に新規設定された投資信託も避けたほうがいい。金融ジャーナリストの鈴木雅光氏が言う。

「昨年夏以降に新規設定されてきたファンドの本数は600本ほどあり、そのほとんどがNISA対応と謳っています。こうした新規設定ファンドを買うのはリスクが高いといえます。ファンドの信頼性が一番よくわかるのが過去の実績ですが、まずその情報が少ない。

さらに、NISAでは最長10年間運用できますが、日本の投資信託の平均寿命は6~7年程度のため、10年経たずに償還されてしまうリスクがある。金融機関の営業マンは新規設定のファンドを薦めがちですが、それは無視して昔から長く運用されているファンドを選ぶほうがいい」

■えっ、株が買えないの!?

どの金融機関でNISA口座を作るかも、吟味して決めないと痛い目にあう。一度口座を作ったら、1年経たないと開設先の金融機関を変えられない上、金融機関ごとに購入できる商品の種類が全然違うからだ。

「NISAで買えるのは株式、投資信託、ETF(上場投資信託)、REIT(不動産投資信託)ですが、銀行が扱うのは投資信託だけ。証券会社は基本的にすべてを扱っているので、品揃えを考えれば、基本は証券会社に口座を作るのがいい。

総合証券かネット証券かについては、投資の初心者は総合証券がおすすめです。ネットの場合、売買手数料などは安いですが、銘柄選びから発注手続きまですべて自分でやらなければいけない。慣れていないとこれは相当ハードルが高い。NISAは(前述したように)儲けて初めてメリットがある制度なので、手数料の安さよりも情報量や相談できる環境を手に入れることを優先。そこである程度トレーニングをして、自信が出たらネットに移るのが合理的でしょう」(ファイナンシャルプランナーの深野康彦氏)

NISAは、誰にも儲けをもたらす打ち出の小槌ではない。見てきたようなリスクを理解したうえでうまく使いこなせば、初めて非課税のメリットを享受することができる。

では、専門家たちがすすめるNISA向けの投資術を紹介しよう。株を買うコツは、「配当の非課税メリットを享受できるうえ、値動きが小さい銘柄を狙え」だ。

「私のおすすめはJTやJR東日本、セコム、花王など配当金が増加傾向の会社です。高配当でも配当金より一株当たり利益が小さい企業は避けたほうがいいでしょう。NISAで武田薬品工業に投資している人が多いようですが、同社は一株当たり利益より配当金が多く、減配リスクがあります」(びとうファイナンシャルサービス代表の尾藤峰男氏)

「配当利回りが1・5%以上あって、さらに株主優待もあり、しかも5万円以下で買える銘柄を10銘柄ほど保有してはどうでしょうか。大きな値動きはないうえ、中長期で優待と配当を楽しめるのでNISAに向いています。カーテンレールで国内トップのトーソー、玩具大手のタカラトミー、甲府が拠点のホームセンターを運営するくろがねやなどが該当します」(SBI証券シニアマーケットアナリストの藤本誠之氏)

続けて投資信託とETF。

「NISA投資では非課税を最大限に生かすために、期待リターンが高いもの。その上で、投資信託の管理手数料である信託報酬が少ないものを選べばいい。『コモンズ30ファンド』『ひふみ投信』といった、一定の実績がある独立系直販投信などはおすすめです」(前出・大江氏)

「広く世界をカバーする銘柄を選ぶという視点が大事。ETFなら『バンガード・トータル・ワールド・ストックETF』、これ1本で十分です。このETFは世界中に分散投資しているため、世界の株式市場が今後成長を続けていく前提に立てば、値下がりするリスクが低いといえます」(前出・尾藤氏)

NISA投資は初心者が甘い言葉に乗せられて手を出すと、大痛手を食らうリスクを秘めている。それでも始めるのなら、「損をしても困らない余裕資金に限ること」(前出・深野氏)と肝に銘じておいたほうがいい。

「週刊現代」2014年3月1日号より

週刊現代 2014年 3/1号 [雑誌]
講談社 (2014-02-17)
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