NISA、若者使わぬワケ お金・成功体験・関心 3つの「ゼロ」 利用者の半数以上、高齢者に偏る

 1月に始まった少額投資非課税制度(NISA)。開始時点の口座開設数は475万件と、政府目標の約3分の1に達した。だが、利用者の半数超は60歳以上の高齢者。若年層の資産形成支援という制度の狙いと、実際の利用者に大きなズレが生じている。なぜ若者の利用は低調なのか。NISAの日(2月13日)に考えてみた。

nisa

金融資産持たず
 「投資って結局、ギャンブルでしょ」。東京都内のコールセンターで働く加藤慎治(仮名、32)は4日、スマートフォンで日経平均株価を見てつぶやいた。この日は610円下がり、今年最大の下落幅になった。

 加藤は昨年、NISAを使おうかと考えた。インターネットで調べ、投資経験のある友人にも話を聞いた。「お金に余裕がないと相場に一喜一憂するだけ」。返ってきたのはこんな言葉だった。

 独身の加藤は、毎月の給料から家賃や食費などを払えば手元にほとんど残らない。「やっぱり投資はお金がたくさんある人のもの」。加藤は口座開設をやめた。

 日常で使う預貯金を除くと、金融資産を持たない若者は増えている。日銀の金融広報中央委員会によると、2013年の金融資産ゼロ世帯は過去最高の31%に上った。20代が最も多く、相対的に収入の低い非正規労働者が多い世代だ。非正規労働者も13年平均で労働者全体の36.6%を占め、過去最高だった。若者の投資余力は年々小さくなっている。

 若者がNISAを敬遠する理由はもう一つある。成功体験の乏しさだ。「元本割れのリスクが怖い」。大手広告代理店勤務の広田明(28)はいう。株は値上がりしても一時的という感覚だ。

 日経平均株価は1989年末に最高値をつけた後、長期低迷に陥った。今もピーク時の4割に満たない。昨年、アベノミクスで値を上げたが、足元では米量的緩和縮小の思惑から乱高下する。広田は仕事のつきあいで証券会社にNISA口座をつくったものの、「投資するつもりはない」。

 そもそも投資に無関心な人も多い。東京証券取引所が昨年、NTTデータ経営研究所に委託して実施した調査では20~30代の女性の8割程度が株式投資を「知らない」もしくは「取引制度やルールなど具体的なことは知らない」と回答した。

 では今の20~30代が預貯金だけで老後資金を蓄えた場合どうなるか。野村総合研究所上級研究員の金子久は「実質賃金が1%以上上がるなど良好な経済環境が続かない限り今の退職世帯より生活は苦しくなる」とみる。

 お金、成功体験、関心――。若者の投資を阻む3つの「ゼロ」を乗り越える手段として金融庁が勧めるのが毎月一定額を投資する積み立てだ。価格が下がった局面では、多く購入でき、上がった局面では少なくなる。「ドルコスト平均法」と呼ぶ手法で、平均購入価格をならして、高値づかみを防ぐ効果がある。

 実際、一部の若者の間で積み立て投資は増えつつある。積み立て投資を推奨してきたセゾン投信は800億円弱を預かる規模になった。毎月5000円から積み立てでき、主要顧客は30代と業界で異例の若さだ。

英は「子ども版」
 金融市場関係者の間で、若者の投資を促す切り札と目されるのは「子ども版NISA」だ。日本が制度づくりのお手本にした英国で導入している。英国では親や親族がお金を出し、子どもが一定の年齢になるまで引き出せない。

 現行のNISAは自分の責任で投資判断できる20歳以上の成人に限る。日本でも英国と同様にして年齢制限を撤廃すれば、対象は約2000万人増える。このうち5%に相当する100万人が1人あたり100万円投資しただけで、1兆円のお金が動く計算だ。

 昨年4月から始まった非課税措置で祖父母から孫に資産移転を促す教育資金の贈与は増えている。信託協会の調べでは「教育資金贈与信託」の契約金額が昨年末までに約3600億円に達した。

 日本の家計の金融資産は約1600兆円。このうち約1000兆円を60歳以上の高齢者が持つ。若者の投資を後押しするには上手に資産の世代間移転を促す仕組みも必要になってくる。

=敬称略

(奥田宏二)

日本経済新聞 2014/2/13付

記事では「お金・成功体験・関心」が若者の投資を阻む3つの「ゼロ」だと言っていますが、もともと日本人はお金は投資ではなく貯金するというのが一般的なので、3つ要素が備わっていても投資をしない若者はそれなりにいると思います。投資がギャンブルだとは思いませんが、素人が簡単に勝てるものでもないと思います。無理にNISAを推進しても勝てないと続かないので、日本人にはNISAは向いていないのではないかと思います。

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